Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

イマジネーションを逞しくすることによって認識可能な美しさ

久しぶりに建築雑誌、GAJAPANと新建築ですが、それぞれどっさり数冊分見てくることができました。そこにあったものしか見れていないので、欠落していた号などあったり情報は幾らか抜けているかと思います。

一時期は、もう建築自体をそんなに見に行ったり建築を撮影する気も出ないということもありましたが、最近はまた、実際に見に行ってみたいと思う建築もだんだん増えて来ました。若手の建築家の方々の建築など特に。

発売中の最新号「GA JAPAN 179」は、特集「木の建築」の各建築家の方々のお話を大変面白く読みました。

GA JAPAN 178」では、原広司さんの建築(新宿区のマンション)とインタビュー形式でのお話が掲載されていました。そのお話しが、かなりわかりやすくて、記号場についてこれまで以上により伝わり易いお話となっており、今まで読んだ中では最も良く理解が行ったように思います。マイクロデュレイションの表記法として関数Etも出て来ていました。

今回読んだものでは無いですが、以前読んでコピーを取っておいたものが一つあって、それは横書きだったので多分、「新建築」の方ではないかと思うのだけれど、『「機能から様相へ」というのは「ものからことへ」ということであり、「建築は出来事である」』と始まる文章が、近年あったようでした。そのお話の続きとしても「GA JAPAN 178」掲載のお話を読めるように思いました。

たまたま自分自身が今年に入ってから再び哲学系の書籍を真面目に読んでいたところだったので、ちょうどまさにそうした現象学の、特に空間や時間が関わってくる辺りを意識し続けていたということもありました。そして少し前からの、量子論の本だったり、そういうこともあって、ちょうど思考が哲学頭になっており、ちょうどタイミング良く頭に入って来易かったということもあるかもしれません。

ハイデガーアリストテレスの研究者なのだけれど、ハイデガーの講義録は、未完と言われる「存在と時間」で本当は一体何が書かれようとしていたのかを知ることのできる、非常に良い手がかりとなる、と研究者の間では言われています。講義録で大変詳しく述べられているので、一体何が書かれようとしていたかは大体推測はつきますが、これは、ハイデガーは未完で終わっておいて良かったのではないだろうか思ったりもします。エルンスト・マッハの影響を受けているだろうとは思うのですが、そうだとしたらエルンスト・マッハの空間や時間に関する考察の方がきめ細やかに書いています。しかしそれがその時代の限界でありその先の風景は見えません。「存在と時間」の未完部分、書かれなかった部分というのは、そこに至るまでは折角良く出来ていたものが一番最後でつまらない薄っぺらい話でぶち壊しになる程のものに推測されました。少々現代人にとっては感覚的に古い感じに映るかもれません。

その点、ここで突然、建築家さんのお話の方が優れているというのも不思議なのですが、「存在と時間」の未完となっている内容としてより相応しい内容なのが、上記の「GA JAPAN 178」の原広司さんのお話の中に出てくる記号場に関わるお話ではないかと思われてなりません。非常にぴったりと来て、ハイデガー存在と時間」の「傑作バージョンの未完に相当する内容」を語られているかのようです。最後の方に、「時」というのが出て来ますが、道元の「有時」の概念は、当初、翻訳者からはハイデガーと重ね合わされ理解されたようですので、それも的を射ているものと思われます。

もうちょっと詳しく良く書けるといいのですけど、只今ちょっと出先で、手元にコピーも何も、資料が何も無い状態で、少し前に雑誌を見てきた記憶だけで書いている状態なので、間違えたことも書いてしまうかもしれません。

エンクロージャーの各名称などの物質性に依存しない空間の表記法、空間にものを置く、ものを置くとは(ものの意味を取り除いた後の)記号を配するということ、記号と化し出来事の場を誘発する、それが記号場。(間違っているかな?本当に記憶頼り。自分で書いたこのブログの過去ログを参考にしたらとこうなった。)ものは定まったものでは無い、というのも、量子論とも一致していますよね。時間の中にあり(マイクロデュレイション)、アリストテレス的に言えば生成消滅するものであり、絶えず変化し定まることはない。様相。

建築雑誌に書いてあることとは思えないほど、言葉を追っていくごとに次々と美しさを感じ、とても光に満ちた美しい情景が想像されました。美しい世界。文面からそうした光景が想像でき、とても感動しました。

『ディスクリート・シティ』 原広司 - Qu'en pensez-vous?

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