Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

「小さな建築」や「縮小」の概念はメジャーなのかマイナーなのか

大名古屋ビルヂング&スカイガーデン - Qu'en pensez-vous?

↑少し前の上記記事で本当は思ったことがあったのだけれどまだ書いていなかったので、今から補足したいと思います。 

圧倒的な外観に比べたら、内部空間はこぢんまりとしていると私は思いました。というのは、Google大名古屋ビルヂングを検索して最初に出て来る所のレビューで「ゆったりしている」という表現が幾つかありましたが、私の感想は「え?そうかな?」でした。確かに、やけに大きいタリーズコーヒーはありましたけれど、全体的にはコンパクトな印象が強かったです。

大名古屋ビルヂング&スカイガーデン - Qu'en pensez-vous?

「ゆったりしている」という幾つかのレビューについて。
ゆったりしている、ということを大きなことであると理解した場合・・・。

愛知県に詳しい方に聞いたところ、大きければ大きいほど良い、という考え方が愛知県にはある、と言ってました。エビフライが大きいほど良いというだけにとどまらず(!?)、結婚式や葬儀でのお持たせが特大で邪魔になるほど持たされて帰らせられるということも一例として挙げられ、空間的にも大きく広々としたものが好まれる。
・・・それを言ってしまったら、あらゆる地方、日本のほとんどの田舎ではそういう大きいもの賛美の方の考え方が当たり前なのではないかと思えてきました。

ですので、コンパクトシティとか、小さいことの方が好ましいといった考え方は実はものすごく東京的で、先進的で都会的な考え方なのかもしれない、というふうに突然思いました。 

ですので、当ブログで取り上げているような建築家の方々は、「コンパクトさ」とか、建築が「小さめであること」を良きこととして論じていて、私などもそうした建築家の方々の言葉を信じて生きて来たのだけれども、日本の地方/東京から遠く離れた地域の大勢の人達というのは、そんなことは思いもしないし、この21世紀にあっても「大きければ大きいほど良い」と信じて生きているのかもしれない、という不安がよぎりました。

もしそういう昔風の「大きければ大きいほど良い」という考え方の人達に向かって、隈研吾さんなどのスター建築家が『小さな建築』と呼びかけたとして果たして通じるだろうか?話の意味が通じない人たちが日本中にたくさんいるのかもしれない。そう思って、何となく、ぞっとするようなものを感じてしまいました。 

小さいものが良いというお話は、建築家原広司さんの『集落の教え100』[76]縮小、その他「空間<機能から様相へ>」などにも出てきます。

[76]縮小
すべてのものは、拡大するより、縮小するほうが好ましい。
すべてのものをやや小さめにつくれ。

詳細を読んでみると、実際にはこの逆の事例、拡大する方向で住居や広場が作られる例もあると書いてあるものの、どうやら原広司さんの感性では小さめが美しく、訴えるものがあると感じていらっしゃるように読めます。

この縮小について、私は一番最初知った時はかなり意外に感じたものです。やはり、平凡な感覚では大きい方がいいのではと思ってしまうところを、「ああ、そのように考えるのか。」と開眼させられるような気持になって、それでこの「縮小」について、インパクトを持って考え方のオプションとして植え付けられたと思っています。
(更には、この「縮小」の考え方から、方丈空間へとつながって行き、最終的に「場の誘起」と関連のある「非ず非ず」の論理へと発展して行くのだと思うのですが・・・。ですので、「縮小」の概念は非常に重要な位置付けをされなければならないものだと思います。)

こうして衝撃を持って新しい考え方が入って来ない限り、大部分の人達は依然として「大きいもの賛美」の考え方で一生過ごすことになるのではないでしょうか。そもそも、空間に対して小さいのがいいとか大きいのがいいとか、そんな抽象空間について真剣にイメージして興味を持って考える人口がどれだけいるかということにも関わってくることですけれど・・・。

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『小さな建築』 隈研吾 著 - Qu'en pensez-vous?

「集落の教え100」原広司 著 彰国社 - Qu'en pensez-vous?

「空間<機能から様相へ>」 - Qu'en pensez-vous?

エル・デコ8月号の隈研吾さんインタビュー記事 - Qu'en pensez-vous?