インテリアデザイン雑誌『エル・デコ』8月号に、『隈研吾が目指すスローで小さな東京』という特集がありました。
一般向けの雑誌の方がわかりやすい気楽なお話が読めるのですごくいいなと思っています。日本の木材を用いる、日本には木造建築文化があるということ、優しい建築を作る、などのお話があります。
丹下健三さんの時代の価値観は現代においては見直され、『東京は小さくゆったりとした街を目指す時代を迎えている』とのことでした。少子高齢化などもありますし、コンパクトシティは当然の流れとしても、隈研吾さんのようなスター建築家がそのように発信することで、社会全体が確実にそのように動いていくだろうと予想されますね。スター建築家の役割ってそういう方針を提示することなんでしょうね。
コンパクトシティについては『モダンリビング』2018年5月号にも同様のインタビューがありました。
こちら、238号は、豪邸特集の他、スター建築家としては、田根剛さんと隈研吾さんが登場されてました。隈研吾さんてどこにでも出ているんですね。隈研吾さんのスペシャルインタビューがありますが、これ結構内容が良いと思いました。『負ける建築』『自然な建築』『小さな建築』を一気に凝縮したようなお話が読めると思います。GA JAPANとかで語っている内容とかよりも良い感じがしました。
ML モダンリビングの豪邸特集が面白い - Qu'en pensez-vous?
『エル・デコ』8月号168頁の下の方、小さめの写真ですが工事途中の新国立競技場の写真が掲載されています。
これを見ると、スポーツ施設にはあまり見えないというか、何となく、お寺のような競技場になりそうな気配がしないでもありません。少々、完成した状態が本当に大丈夫かドキドキするような気持ちはしました。基本、機能面とかは大丈夫としてもディテールが『お寺』だったとしたら・・・。スポーツ施設/スタジアムのみなぎる雰囲気はちゃんとあるのか、出来上がったら全然問題なくカッコイイ、大丈夫だった、というのを期待しています、もちろん。
建築家の作風というのを考えてみると、普段の作風とは違うものがスポーツ施設になると果たして突然出て来るだろうか、というのを考えてみて、何例か、頭の中にスポーツ施設/スタジアムの設計経験のある数名のスター建築家の作品群と、彼らの通常の作品とを思い浮かべてちょっと比較してみました。
どうでしょう、読者の方々も色々イメージすると思いますけれど。
結構、槇文彦さんとかは変幻自在に見えます。施設のスケール、用途に応じて、簡単に、作風というよりもディテールを化けさせられる腕前をお持ちのように見えます。どんなものも器用にそれに適したデザインでこなされている。それでいて、文化施設もスポーツ施設もコンベンションセンターも集合住宅も商業施設も、全体的に見れば統一感があって同一のアーキテクトのものとわかる。
丹下健三さんはそういう意味で言ったら、すごく上手いのかもしれないと思いました。施設の用途と自分のデザインが上手い具合に合致している。一度毎に違うことをやっているように見えても、どれをとっても丹下健三の作品とわかる。
原広司さんなども、札幌ドームとか、ものすごくスポーツ施設っぽかったですね。原広司さんが好んで用いる宇宙的なモチーフはスポーティーなものと意外なほど親和性がありました。そうした宇宙的なモチーフや色彩感覚を携えつつ、近年では幼稚園、かなり前には教育施設なども多数手掛けられていますが、そのような場面ではスポーティーさは陰を潜めており、幼稚園では温かみやポップさ、教育施設ではシャープさだけでなく柔和さなども感じられる作品が多いように思います。京都駅なども宇宙的モチーフは多いものの、どちらかというと渋さや伝統を感じさせるのが不思議なところです。あずまや風ディテールによるものでしょうか。
内藤廣さんとかもスポーツ施設ありますけど、木を使ってますけど全然違和感無い。和風とも思わないしスポーティーでないとも思わない。上手。綺麗。木を使っていて落ち着きがあるのにちゃんとスポーツ施設。建築自体に落ち着きがあるというか貫禄がある。
施設のスケール、用途に応じて、1人の建築家でも多少ディテールに幅があり、デザイン上のヴァリエーションは多岐に渡り、人に与える印象も作品ごとに異なる場合の方が多いのではないだろうか、と思うのですが、隈研吾さんに関しては、ルーバーが登場して来た時代の辺りから、全ての作品が見事なまでに同一の要素、雰囲気でまとまっているのが特徴と言えば特徴となるのかな、という気がしてきています。
最近、隈研吾さんのちょっと違ったものが出て来たなと思ったのは、海外の作品で、あれは英国のV&Aだったのではないかと思うんだけれど、ああいうのが本来の隈研吾さんの形態なのではないかと建築雑誌で見た時にまず思いました。ず~っと昔、M2というのがあったと思うんですが、あれを貫いても良かったのに、とずっと思っていました。きっとM2は世間的には色々言われたのかもしれないけれど、別に悪くないんじゃない?何か悪い?と思いました。あれが隈研吾さんの本来の作風なのではないのかなあ。ジャイアント・オーダーの時代と言うの?わかりませんが、今だったらそれに戻っても誰も文句は言わないんじゃないのかな、と思った。
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