Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

芦原義信さんの『隠れた秩序』を読みました

『隠れた秩序 二十一世紀の都市に向って』
芦原義信 著
中央公論社

読んでから少し時間が経ってしまったので上手く書けるかわかりませんが、以下の記事↓を書いた時に、本当はこの内容で書こうと思っていたんですが時間が無くて今に至ってしまいました。

テニスのマリア・シャラポワ選手の自邸が陰翳礼讃な日本風 - Qu'en pensez-vous?

  

マリア・シャラポワは、自邸内で裸足で過ごしていました。行動面でも日本風ということで更に驚き。

テニスのマリア・シャラポワ選手の自邸が陰翳礼讃な日本風 - Qu'en pensez-vous?

芦原義信さんの『隠れた秩序』で最も印象に残ったことは、日本人は靴を脱いで家の中に上がる、靴を脱いで家族が密接な生活を送っている、というお話です。
西洋の視点から見て、日本の家屋はまるで大きな寝台のようなもので、ベッドの上で人々が大変寛いだ生活を送っているように見える、ということが念を押して書いてあったと思います。

どうやら芦原義信さんは、玄関で靴を脱いで家の中に上がって過ごす日本の住宅について、家屋内がワンルーム仕様の寝台空間であるが故に、他人を自邸に招き入れ歓談したりする社交の場に成り得ないことをあまり好ましいことではないと考えているように読めました。

165頁に『わが国の一戸一戸の住いがそれぞれ大きな寝台で家族がその中で仲よくごろ寝していると仮定すると、これはとんでもない都市構成をもたらすことになる。』
とあります。

これを考えていて、また思い出したのが、原広司さん設計の反射性住居のシリーズでした。建築雑誌の写真でしか見たことはありませんが、『住居に都市を埋蔵する』というコンセプトの下、反射性住居は住宅内部が都市さながらの景観と空間を有しており、このシリーズは、芦原義信さんが懸念を示す日本的な寝台空間とは明らかに異なり、住宅中心に『廊下』という概念に属するものではなく『ストリート』に属する空間が通っており、頭上のトップライトはただの天窓としての機能以上のヨーロッパ風アーケード様の仕掛けとしてあり、それらの左右にシンメトリーにプライベートゾーンが配されるという、非日本的な空間となっていると言えるようにも思います。反射性住居のシリーズは、実はとても西洋的な空間性を有しているのではないかと常々思っています。

これは少々古い本で昭和の時代に書かれたものですから、その時代にはそのように考えられていたのか、とタイムトラベラーになった気分で読んでしまうんですが、165頁から169頁の部分の文章が21世紀へ向けての提言になっていると思います。
まさに現実にここに書かれた通りにほぼなっていると思いますが、幾つかこの時代には思いもよらなかったこととしては、少子高齢化と地方の深刻な過疎化、そして災害の多発だったのではないでしょうか。

これ以外にも、第一章建築の外観について3遠目の建築・近目の建築、第二章3足算と引算の形態ー部分と全体4緑化の哲学、なども大変面白く読みました。

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