子供の現代文の問題集の採点を行っていたところ、建築家の芦原義信さんの文章が掲載されていたため丸付けそっちのけで興味深く読んでしまったということがありました。芦原義信先生の著書『秩序への模索』からの出題でした。実際には芦原義信さんなどと気軽に呼べるような人ではなく、おそらく建築の世界ではかなりの大先生なのではないかと思われます。もっと色々読んでみたいと思っているところですが、図書館から物凄く出して来てもらわないと読めないような年代物の本となってしまっているようなので、とりあえずパッとすぐに見ることができるものが芦原義信先生の息子さんである芦原太郎さんが出されている以下の本だったため、そちらを見てみました。
くうねるところにすむところ 04 家族をつくった家
芦原太郎 著
インデックス・コミュニケーションズ
とても面白かったです。
これは、色々感想を書いたりするよりも、ただ素直に順を追って見て、ライフステージと共に増築されて行く住宅の姿を、多くの方が見て考えるべき本で、多くの人に読まれるべき本だろうな、と思いました。良書です。
絵本のような本ですので、建築や住宅に興味のない方であっても楽しく見ることができそうです。
建築に興味が無い人であったとしても、必ず何らかの住居に住み、生活し、人生の多くの時間をその場で過ごしているわけですので、日常生活、ライフスタイル、時間と共に変化し巣立って行く家族、病気療養や人生の最期まで、すべての人に共通する人生の機微があると思います。それを支える舞台としての住宅の展開や役割、住宅が人生に対して与えてくれるもの、といった、何か心のこもった、心が温まるような何かを感じられる1冊になっていると感じました。
スケッチだけですとこの住宅のデザイン性の高さがはっきりわかりませんでしたが、ハードカバーをめくったところの内表紙の題名の下に、この住宅の写真が小さくありました。『家族とともに成長してきたこの家は、樹木におおわれひっそりとしたたたずまいをみせています。』と、写真の脇に文章が添えられています。とても落ち着いたモダンな建築です。美しいと思いました。
一番最後、裏表紙の手前に、『芦原義信デジタルフォーラム』の紹介があります。芦原義信先生の業績がインターネット上で閲覧できるようになっているとのことです。
冒頭の話に戻りますと、受験生がやるような評論文の問題集には、著名な建築家による文章が出題されることが多いです。現在、うちの子供がやるような問題集で最も見かける機会が多いお名前は、建築史家の陣内秀信さんではないかと思います。頻繁に見かけます。陣内秀信さんの文章は、私自身が受験生だった頃にも良く登場していました。他には、やはり芦原義信さんの文章は見かけた記憶がありますし、原広司さんの文章も出て来たことがあったと思います。隈研吾さんの文章は、まだ問題集では見たことがありません。東京大学の方々って、本当に、国語の能力がびっくりするほど高いと思います。例え理系であっても国語が抜群にできる。それが東大の方々の特徴。うちの子の学校の上位には、東大の理系の方に行きそうなエリートの方々が大勢いて眩しすぎてひっくり返るどころかまったく足元にも及ばずうちは凡庸な人生を歩んでいるところですが、エリートの彼らは国語が大変できるように見えます。理系も文系もパーフェクトにでき、バランス良く完全無欠の人が東大理Ⅰ~Ⅲに入るのだけれど、それでもやはり国語が突出してできるというのが東大生の特徴として言えるような気がする。国語の力がすべての能力の源となっているようなイメージ。だから東大建築学科の方々の文章が国語の問題集に掲載されるのだと思いますよ。
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