Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

新建築6月号建築論壇より

新建築2018年6月号建築論壇に、ランドスケープあるいは〈情景図式〉の構造、そして建築のマイクロデュレーション、と題された原広司さんの文章載ってました。

今回は読み進めるごとに安らかな気持ちになって行くような文章でした。植生が全体を貫くお話となっていることからそのように感じたのかもしれません。諸先生方の影響の元での、緑化、植生、木、森とランドスケープ・デザインの過去・現在・未来といった時間経過内における可能性について書かれてあります。
読んでいて、これは「古墳シンドローム」と言えるのではないだろうかと思ったり、隈研吾さんが言うところの「負ける建築」的なものを強く感じました。そこに書いてある諸先生方から、原広司さんを通して隈研吾さんにその影響が及んでいるのだろうなあと思ったりしました。

ところで、首里城公園があるあの場所は、元々は琉球大学があったのですか。琉球大学が移転して今の世界遺産が出来上がったなんて、この文章により初めて知りました。
当ブログにも、十数年前に那覇市立城西小学校の正門から撮った写真あるんですが、それは那覇に旅行した時に、本当にたまたま見つけて撮影したものでした。
首里城が後から復元されたものとも知らず(元々あったものを改修したため新しく見えるだけだと思い込んでいました)、ただ観光で巡っていた最中、首里城公園内にあった周辺地図をふと見たところ「那覇市立城西小学校」と書いてあったので、下の方を見渡すと、確かにGA ARCHITECT13の原広司さんの作品集にあった小学校だと気が付いて、下って歩いて見に行きました。もっと行きにくい場所にあると思っていたので、こんな観光地にある小学校とは驚きました。しかし正門からだとほとんど見えませんでしたね。休暇中で誰もいないようでしたが、不法侵入は良くないので結局良く見ることはできませんでした。首里城公園辺りの高台からが各棟の配置が最も良く見えました。
そんなわけで、やはり一度、那覇市立城西小学校を見たことがあるおかげか、この文章に書いてあることのイメージ化が容易になる感じはありました。
首里城公園は素晴らしいですね。今でも思い出せます。巨石文明っぽい黒っぽい石垣と言えばいいのか、巨大な石でできたような坂は驚くべき古さで、タイムスリップしたような感覚に陥りました。また機会があれば行きたいです。

ランドスケープの抽象化については、トリアーデ図を用いてのお話になっていました。最初ページをめくった時は、また何やら解読が大変そうなのが載ってると思いましたが、読んでいくと大丈夫、分かりました。
建築の立地と環境との関係が、トリアーデ図によって説明されていることが、順に読んで行ってわかりました。
さらに、今まで自分が誤解していたらしいこともこの文章全体を読んで気が付かされた感じもありました。
時間経過、建築を取り巻く自然、というのがかなり重要な事らしく、建築単体ができただけではどうやら不十分のようであり、取り巻く草木に建築が埋もれて初めて、イマジネーション上の想定状態へと至るらしいです。この、「植物が生い茂って初めて・・・」というのは、隈研吾さんの新国立競技場も、時間経過によって植物が茂っていかないと想定する状態ではないらしので、その点でも同傾向を継承しているようです。西沢立衛さんなども、森山邸のことだったと思いますが、木々に埋もれる予定なのでまだ未完成です的な話だったのではなかったかと思うので、緑化、植生がいかに重要な事であるか、ということになろうかと思います。

最後の方のこれは数式なのか集合の表記のようでもありますが、現在の状態と、想定上の未来の状態という時間経過を見越した上での設計/デザインとなる、と言っているんだと思いますが(たぶん)、そういう部分が建築とは非常に不思議なものだなあという気がします。

取り巻く自然に被覆されること、その過程、月単位、年単位でその様を変えていくこと、施設を利用する人たちの営み、動き、経路、人によって使われることによって増していく空間性の厚みといった目には見えない変容も恐らくはある。
建築それ自身は悲しいことに物質性からは永遠に逃れようはなく、物質的には劣化し朽ち果てて行くものだけれども、使われることによって何らかの目には見えない繰り返しなぞられた空間性が出来上がっていくだろうし、絶えず生成を繰り返している周囲の自然と混ざり合い、情景と成り行く。・・・そんな少々ロマンチックな想像力をかき立てられた次第です。

GA JAPANなどその他建築雑誌は最新号をちらっと見ただけで、ブログ休止中の間の号などまったく見ていないので、レビューするとしてもまた後ほどとなります。

「YET」 HIROSHI HARA から原広司さんの建築理論の普遍性について考える - Qu'en pensez-vous?

HIROSHI HARA:WALLPAPERS の補論2「情景図式と記号場」後半部分を再読してみました - Qu'en pensez-vous?

GA JAPAN147と新建築7月号から - Qu'en pensez-vous?

「非ず非ず」を西洋の言い方に置換してみると?(2) - Qu'en pensez-vous?