Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

前川國男 東京都美術館 これも「下降する」建築

東京都美術館 設計 前川國男

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いったん下がって建物に入るこのスタイル。

下がらないと建物に入れない。こういう建築って、ごく近年の現代建築にはまったく見られない手法ですよね。こんな入り方をする建築、最近何かあったでしょうか?

東京都美術館はわりと派手な展覧会が開催されることが多い印象で、建築に興味がない人でもかなりたくさんの人がこの建築を訪れたことがあるのではないかと思います。不思議だと思いませんか?下がったところにエントランスがあるなんて。下降しなければ入れないなんて。

いったん下がって入って、その両翼と奥翼に空間が横たわるスタイルは、ルーブル美術館とも一見同じですね。ルーブル美術館は、割と勝手に、3翼に好きなように入って出てくることができたと思いますが、東京都美術館の内部は少々不思議です。
東京都美術館は企画展の場合、左翼から右翼に強制的に順路がつながっていて最後右翼の方から奥翼へ出て来ることになっていたのではないかと思います。

何かこれに似たものがあったとすれば、これももうかなり昔の建築になってしまうと思いますが、原広司さんの反射性住居のシリーズが、いったん下がる、というスタイルですよね。両翼と奥翼という感じもまあまあ似ている。
ということは、1970年代はそういう空間スタイルが流行ったと言えるのでしょうか?

通常、建築物に入る時の空間体験というと、ただ平地で段差なく入る場合は何の印象にも思い出にも残らない場合が多いけれど、「上る」「階段を上がる」というのは印象深いです。
私の場合ですと、例えば日本武道館。あの階段を登ったという体験は記憶に残ります。既に取り壊された旧国立競技場も確か登ったと思います。上るというのは負荷がかかるために意外と記憶に残るものです。それに対して「下降」とは。

下降している時は負荷が無いので特に何も感じないと思います。半地下のような空間に達した時の印象の方が強いです。お籠もり感的感覚かもしれませんが、何か不健全な悪い場所に来たような感覚です。悪いワクワク感を感じます。

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「下降」ということの不思議さ、土地や地盤の影響でこんな空間構成というか、不思議な経路性をもつ空間が出現してきたのかとも思いましたが、そうではなく意図的にこういう設計にしたのだとしたら、なぜそうしたのか知りたい。何か調べればわかるのかな?これはとても不思議でたまりません。
私としては、前川國男さんの東京都美術館、とても不思議な経路性を持っていると思っています。

いったん下がって3翼へ。記憶に残る空間体験です。

前川國男さんは、外壁はこの色が好きみたいですね。わずかにえんじ色がかった茶。

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