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空間について考えます

あの日からの建築 伊東豊雄 著

あの日からの建築 伊東豊雄 著 集英社新書

第一章 あの日からの「建築」
第二章 釜石復興プロジェクト
第三章 心のよりどころとしての「みんなの家」
第四章 「伊東建築塾」について
第五章 私の歩んできた道
第六章 これからの建築を考える

こちらの『あの日からの建築』は3.11の翌年に出た本で、最近発売されたばかりの『「建築」で日本を変える』を読む際に一緒に読んでみました。

94頁、伊東豊雄さんは、大学で教職につかないことに決めている、と書いています。そうだったのですね。その理由についても、やんわりとではありますが書かれてあります。
102頁~104頁の「アカデミックな建築教育におけるコンセプトとは」のところは、場を設けたところで、コミュニティはひとりでには出来上がらないということが、今の若い人たちにはわからないようだ、という感じのことが書いてあります。簡単に言えば、最近の若者は常識が無く、社会人として欠落しているものがある、ということらしいです。
105頁、社会性を身につけることの大切さ、というところでは、3.11で家を失い瓦礫の中から立ち上がろうとしている人たちに対しての設計にふさわしくないコンセプトを出してくる若者を叱咤する伊東豊雄さんの姿があります。相手の気持ちを汲み取りましょう的なメッセージと思われます。
128頁、「消費の海に・・・」こんなことを伊東豊雄さんでも言っていたことがあるなんて驚きました。
135頁~138頁「空間感覚の根底にあるもの」で、伊東豊雄さんの建築形態への志向性がぼんやりとわかります。
151頁、過去の別記事に、伊東豊雄さんの建築の中では、私はホワイトUという住宅が好きだと書いた記事があるんですが、なんと、ここを読んだら、ホワイトU(中野本町の家)は既に取り壊されていたということがわかりました。
163頁、ここに写真が載っていますが、パリのコニャック・ジェイ病院、こちら建築雑誌でかつて一目見た時からとても気に入っている建築で、とても美しいと思っています。ホワイトUが無くなった今となっては、私の中ではコニャック・ジェイ病院が伊東豊雄さんの建築の中で一番きれいと思える建築です。
170頁「贈与としての建築」、ここを読んだら、霧が晴れたように、伊東豊雄さんがしようとしていることが何なのか、みんなの家でやったことが何なのかが、すごく良くわかるところだと思います。すごく納得が行きました。
本の最後に、伊東豊雄さんが、カラオケで歌う話が書いてあります。どんな曲を歌うのか知りたい方は是非お読み下さい。読んだらびっくりします。

個人的には新刊の『「建築」で日本を変える』よりも、一つ古いこちらの『あの日からの建築』の方が内容的に良いように思いました。

どちらにしても、伊東豊雄さんは、ル・コルビュジエ肯定派であり、とてもコンクリートが好きだし形態形成において非常に得意とするマテリアルなのではないかと思います。コンクリートの形状はうねっていたりすることが多く、建築のサイズが大き目であることも見逃せません。近年の作品の多くは広い敷地に建つものです。数年前までは、建築が工芸になってしまわないようになどと建築雑誌などで語られていたようでしたが、現在は工芸ではなく造形作品になってきているように見えます。
対して隈研吾さんは反コルビュジエ派で、コンクリートが大嫌い(→「負ける建築」を参照)で、建築の一単位を(ドラえもんの)ビッグライトでレゴブロックを大きくしたような両手で抱えられるくらいのスケールの形態を反復することで、生物的かつ自然透過的な建築を作り上げています。

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「再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築」 林美佐 著 - Qu'en pensez-vous?

 ラ・ロッシュ邸 ル・コルビュジエ コルビュジエ財団 その3 - Qu'en pensez-vous?

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