「現代建築のトリセツ
摩天楼世界一競争から新国立競技場問題まで」PHP新書 松葉一清 著
「新建築」にこの本が紹介されていたため読んでみました。京都大学卒でムサビの先生である松葉一清さんの本。帯には隈研吾さんの推薦文が載っていて、本文中巻末にも隈研吾さんと松葉さんの対談が収録されてます。
結論から言うと、この本とても良かったです。
いろいろあると思いますが、また違った観点からの見方になっていると思います。
ル・コルビュジエ反対派?(少なくとも称賛はしていないらしいことは読んでわかる)として松葉一清さんと隈研吾さんは通じるところがあるのかもしれないですね。
意外と松葉一清さんは感性派である、というか、ちゃんと感覚を使って建築を経験し、その空間体験についてしっかり書いているあたりに非常に好印象を受けました。
共感できるところも多々ありました。
この記事を書くために付箋をつけながら読みましたが、65頁~66頁の「国内の建築専門誌を数年分見返してみましたが・・・あてはずれもよいところでした」のあたり。
少し前、当ブログでも↓
<重症>建築を見る気も撮影する気も無い - Qu'en pensez-vous?
こんな記事を書いて困っていたのですが、本当につまらなくなっちゃったのは事実のようですね。
112頁の「君は聖母を見たか?」のところ。これはすごいですね。恐らく私は建築についてこれほどまでの体験は経験したことが無いのではないかと思います。115頁の、現代建築は直観的であってその美が理性を超越してしまうときがあるなんて、それは思いもよらなかったことだけれど、確かに松葉さんが仰ることはすごい。わかる気はする。
150頁あたりの、ショッピングモールを馬鹿にしてはいけないという話が続くあたり、これはなるほどなという感じです。こういうものをきっちり作っていくことが大事なのであって、美術館とかそういうところにばかり建築の出番があるのではなくて、われわれの日常こそ大事なのであって、そこにしっかりした建築が現れればちゃんとした風景として形作られて行くのではないかというのは、確かにその通り。
204頁あたりでは、モダニズム建築が取り壊しにあい消えていく現状が書かれています。
209頁の「都市のダイナミズム」のところで思ったのは、この方(松葉さん)には、何か他の人には見えていない風景が見えているように私は感じました。観点も多少他の方々とは異なるし、見ようとしているものも多少異なっていて、それはとても良いものを見ている感じがします。何か、松葉一清さんには何か固有の見えている世界像とか風景みたいなものがあるようです。テラスとか、空中に浮かんだ構造体のようなものから、より周縁へと構造体が繋がって行き、経年変化で人工的な風景がいつからか自然な風景へと変貌する過程を見せつけられるような、そのような不思議さを併せ持つ未来的風景が既に見えている感じがあります。
比較的、普通の方々は、建築そのものに対して視線が集中するのに対して、松葉さんは建築自身から周囲や環境を見渡すような視線が強いように読んでいて感じました。環境すべてが視界に入っている。どちらからというと、建築そのものよりも、建築の中に自分が基点としてあり、そこを基点としてパノラマで見渡している視界だと思います。
というわけで「現代建築のトリセツ」、おすすめです。タイトルも西野カナみたいで、キャッチ―でライトな好印象な建築本です。
「紙の建築 行動する」 坂茂 著 岩波書店 - Qu'en pensez-vous?
『建築から都市を、都市から建築を考える』槇文彦 著 聞き手 松隈洋 岩波書店 - Qu'en pensez-vous?