「パリのムスコめし 世界一小さな家族のための」 辻仁成 著 光文社
芥川賞作家でミュージシャンである辻仁成さんの、料理のレシピ本です。
朝日新聞の「作家の口福」という欄に、3週くらいに亘って辻仁成さんがエッセイを書いておられましたけど、とても面白く、それを読んだことが、このレシピ本を買おうと思ったきっかけでした。
実生活から出てきたレシピが紹介されているフランス家庭料理の本って、そう数多くあるわけではないと思います。典型的なフランス料理の数々が紹介されているレシピ本が多い中、こちらの辻仁成さんの「パリのムスコめし」は、創意工夫に溢れているわりにはシンプルで、見た目も美しく、きちんとフランス暮らしの影響が色濃く反映されたお料理集に仕上がっています。直球勝負でおいしさが追求されていて、一つのお皿に対して、メイン食材がはっきりと意識されており、焦点がぼけていない感じがします。このあたりが完全にフランス料理です。辻仁成さんの、食材の選び方や、食材同士の組み合わせのセンスもとても良く、食材同士が引き立て合ってひとつにきれいにまとまった一皿が満載です。
日本の家庭料理とは、そもそも食への考え方が違いますので、比較にならないと思いますが、日本の家庭料理はあれもこれもと、バランスの取れたお料理が良い、とか、ありあわせのもので何か一品、と考えがちです。一方フランス料理は、ドカーンと説得力ある一皿に心を込めるといった感じが潔く、レシピを見ていても、一皿に求める完成度の高さが伝わってきます。
レシピ以外にも、辻仁成さんのエッセイが載っていますが、いろんな苦労話など読みますと、「頑張って」と同情したりして、息子さんと懸命に生活している様子がよく伝わってきて、応援したくなります。フランス語で生活、大変なんだろうなあと思います。フランス人の早口で、ビエという単語が聞き取れなかったのでしょうかね。
個人的には、最近、そばサラダ系の、そばを使ったおいしいレシピを探していて、クックパッドなど見ていましたが良いものが見つからず、どうしたものかと困っていました。しかし、この「パリのムスコめし」の中の「くるみ鶏蕎麦」というのが良さそうに思うので、今度作ってみたいと思っているところです。
他には、青背の魚を使ったレシピは年中新しいものを探している状態なので、「鯖の味噌煮込み炊き込み玄米ごはん」も作ってみようと考えています。こちら、鯖を使ったセネガル料理チェブジェンに見た目が似ているので、そちらからヒントを得られたのでしょうかね。何となくそう思いました。
フランスは、アフリカと地理的に近い関係で、結構アフリカ料理が普通に入ってきているんですよね。
お料理好きな方、辻仁成さんの「パリのムスコめし」、大変おすすめです。