Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

方丈という不思議な空間モデルから、ホログラフィック宇宙論へ

 

後続記事では、大地の芸術祭の今回のコンセプトの1つが「方丈」だったようですが、建築家の原広司さんが著書の中で述べている「方丈の空間」や「縮小の美学」について、独自考察して書いてみようかと思っています(上手く書くことができなかった場合取り止めとなります)。

大地の芸術祭について『日曜美術館「大地に根ざせ!~越後妻有 里山とアートの20年~」』を見ました - Qu'en pensez-vous?

 ↑こちらの記事の最後で、今度「方丈」について書きます、などと書きましたが、自分で書いておいて、ちょっとそれテーマが渋過ぎない?と自分でも思いました。ちょっと気味悪いほど渋いです。しかし最終的にはこれが渋いジャンルの話などではなかったことが徐々に明らかとなります。

「方丈」の一体何が物珍しいのかというと、維摩の住処である3メートル四方、四畳半程度の狭い空間にたくさんの菩薩たちが集まったのに全員収容しきってしまい全員分の調度品(?)まで納めてしまったという「維摩経」のお話が空間として不思議である、ということです。

今回、この「方丈」と「維摩経」を知るために、以下の本を見て見ました。↓

フィギュール彩87
〈狭さ〉の美学 草庵・茶室・赤ちょうちん
近藤 祐 著
彩流社 

↑こちらの34ページに、「維摩経」の方丈の空間で起こった不思議な出来事について書いてありますので詳しく知る必要のある方はそちらをご覧下さい。

この不思議な空間、方丈について、建築家の原広司さんが『空間〈機能から様相へ〉』の中の最終章『〈非ず非ず〉と日本の空間的伝統』の最後の方、鴨長明方丈記』の記載から始まる段落で論じています。
少々、「維摩経」の方丈の内容とは違うようですが、鴨長明は、元々広かった住居をどんどんと縮めて行ったことから、そこから「縮小の美学」へと話が向かって行っています。縮小しながら拡張する、ということで、縮小することによって内と外の反転が起こり、内にすべての外を含むような内部が出来上がっていた・・・といったような何度も何度も我々が慣れ親しんできた原広司さんの反転や埋蔵関連のお話が書いてあります。同様に、『集落の教え100』76番の“縮小”にも、日本の中世の美学には、縮小の美学があり、その典型として鴨長明の『方丈記』が登場しています。どうやら大きいより小さい方が好ましいということらしく、珍しく精神論的な気配が漂います。

この方丈について、私が思ったのは、必ず、出典以外にも、まったく同じ思想背景がこの世の中には存在しているはずだ、と何事についてもすぐ考えたくなるので、この方丈の思想について、類似する西洋哲学及び何か根拠と成り得る考え方は無いだろうかと探していました。西洋哲学をザーッと見て見ましたが、残念ながら方丈に対応しそうな思想はどこにも見当たりませんでした。ライプニッツあたりかと最初は見当をつけていましたが違います。スピノザかとも思いましたがもっと違います。ヴィトゲンシュタインとかも惜しいけど違います。

そこで、困って上記の近藤祐さん著の『〈狭さ〉の美学』の維摩経の部分を読んで考えていたら、1つだけ思い当たることがありました。維摩経の方丈は、とても変わった空間について語っています。これは普通の空間ではなくドラえもんの四次元ポケットのような空間です。

これは、現在最もホットな話題となっている「ホログラフィック宇宙論」に相当するものではないかと私は思いました。ほとんど同じことを言っているように思います。
方丈が「ホログラフィック宇宙論」のことを暗示しているのだとしたら、「縮小する」ということは多分私の理解では除外されてきてしまいます。あまり意味的には関係が無さそうです。ただ、情報1区画としての方丈、情報表面としての方丈なら話として整合性があるのではないかと思います。
そもそもその維摩経が書かれた時代がいつのことなのかもわかりませんが、そのような大昔に、現代人がようやく議論するようになった最先端の宇宙論がどのようにしてわかったのかも不思議ですが、大昔の方が真実に近いものが見えていたということになるでしょうか。「維摩経」のその話自体が、居住空間について語ったものではなく、この宇宙の正体について語ったものであるのかもしれません。とても内容的によく似ているように思います。

今回のネタ本、いえ失礼、参考文献は、以前にちらっと紹介したことがあり、私は上巻だけ読んで長らく放置していたブライアン・グリーン著「隠れていた宇宙 上・下」なのですが、とりあえず必要個所だけ読んでみた下巻第9章ブラックホールとホログラムという章が、方丈の空間をもし説明できるのだとしたらこれではないか、と思えたところです。
そもそも、この「ホログラフィック宇宙論」というものは、「超ひも理論」が元となって話が進められているものなので、「超ひも理論」がおおよそどんなものであるのかわかっていないとチンプンカンプンとまでは言わないものの、表面的な理解にしかならなくなってしまう恐れがあります。私は頭が悪いのでおおよそにしかわかりません。しかし、ブライアン・グリーンの本には、数式は1つも出てきませんし、非理系でも読めて、わかりやすい日常的な具体例を挙げて手とり足とり詳しい文章表現がされていますので、恐れなくても根気がありさえすれば読めると思います。哲学書を読むよりもずっと面白く読めます。私は「宇宙が織りなすもの」上下巻を読んで「超ひも理論」の概略を知りました。でも説明しろと言われたら難しくてできません。イメージ的にしかわかりません。でも、「宇宙が織りなすもの」上下巻を読み、「隠れていた宇宙」下巻第9章ブラックホールとホログラムを読み、その上で「隠れていた宇宙」下巻の表紙の図を見ると、これが何を表しているのかがわかるようになります!

「隠れていた宇宙」下巻第9章のエントロピーブラックホール~ホログラフィック多宇宙という話の展開は圧巻で、こういうふうに説明されるのか、と、既にエントロピーの辺りから次何を言いたくてそれを言っているのかとかがわかる感じで、なるほどね~そうなんだ、パズルのピースがはまっていく感覚でした。・・・これでは一体何を書いているかわかりませんね。きちんと書くためにはもう1回第9章を読み直しながら書かないと書けません。
段階的には、「隠れていた宇宙」のレビューを書く。その後、方丈との関連を指摘したレビューを書く、という2段階の過程が必要です。
でもきっと世界中の様々な理論の中でも、これが最も対応しているように思います。方丈に対応しうるモデルは、ホログラフィック宇宙論

話が難しくてたまらないので本日はここで終了とします。考える気が出たらまた方丈について続編を挙げることもあるかもしれません。

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