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空間について考えます

磯崎新さんの「日本の建築遺産12選」を読みました

「日本の建築遺産12選 語りなおし日本建築史」
磯崎新 著  新潮社

こちらの本、読んでみて大変面白かったです。
建築家の磯崎新さんが、垂直方向と水平方向に日本建築の構築スタイルをジャンル分けしながら西洋建築との比較も含めて解説しています。全体的に口語調で書かれている感じで、磯崎新さんの建築についての気楽なおしゃべりを聞いているような気分で楽しく読めました。

はじめに、と、おわりに、の文章も非常に興味深いです。
はじめに、は、青森の三内丸山遺跡を語ることから始まっていますが、建築する、ということがどういうことであるかが述べられており、建築の成り立ちについて考えさせられる大変興味深い文章となっています。
おわりに、では、やつしの美学、という聞いたことも無いような話が出てきます。恐らく侘び寂び的な意味合いのことだろうとは思います。やつすというと、身をやつすとか、そういう表現をされることが多いことから考えて、困窮してやつれるとか骨と皮だけになるといったイメージがありますが、やつしをテーマに日本の建築美と和様化について述べています。

少々びっくりしたのは、[垂直の構築]出雲大社の最後のあたりのお話で出てくる、磯崎新さん作の3日限りの仮設建築が揺れたので「酩酊船」と命名したという話。
他にも、多分揺れたのではないかという話が出て来る[垂直の構築]三仏寺投入堂のところは面白かったです。こんな場所にどのようにしてこのような建築を作って行ったかを磯崎新さんが建築過程を想像して書いています。
これらを読んで、こんなのでも良いんだ、揺れてもいいわけ!?というか、そんなものなの?というか、建築するということの始原的意味を追求するとそういうところに行き着くのではないかと思いましたし、そうしたプリミティブな原動力を我々現代人は考えたことすらなかったということに思い至りました。
他にも、出雲大社社殿は、わかっているだけでも6~7回も倒壊しているなどの話があり、揺れたり倒壊したりと、垂直方向を目指す建築は異常事態を伴いつつも、それでも構築する力を保ち続けるということで、それこそが建築なのではないか、という異様に説得力のあるお話があります。

[垂直の構築]三仏寺投入堂は、磯崎新さんは今回の取材で初めて訪れたとありました。
だいぶ前ですが何かの雑誌で(カーサブルータス?)、建築家の乾久美子さんだったと思いますが(もし違っていたらすみません)この三仏寺投入堂を訪れている写真を見たことがあります。汗をかいているように見えました。磯崎新さんも書いているように、だいぶ険しい道を行った先にあるようです。この建築は、有名建築家の方が好んで訪れるようですね。三仏寺投入堂鳥取県にあるそうです。鳥取には何にも無いなどという自虐を良く聞く昨今ですが、建築家好みの変わった仏閣が鳥取にあるのは良かったですね。

垂直方向の建築の話ばかり書いてしまいましたが、個人的には、この本の中に出て来る水平方向の建築の方が好みのものが多いです。水平方向の建築の方が美しいと感じます。唐招提寺三十三間堂修学院離宮上の御茶屋、この3つが私は好みです。修学院離宮上の御茶屋の、障子を開け放った先に見える景色は素晴らしいですね。海抜149メートルだそうです。

最後、おわりに、の中盤で、ル・コルビュジエは日本の建築が好きではなかったのではないかという話が出てきます。線が多すぎると文句を言っていたとか。この話、別のどこかでも読んだ気がする。槇文彦さんでしたでしょうか。槇文彦さんの本かお話の中でも、同様の話があったと思いました。ル・コルビュジエはスイス生まれだからフランス人ではないにしても、フランスで活躍した建築家だから、フランス的価値観の人に「やつし」は通用しないかもしれませんね。滅びの美学なんてのはフランスには無いのではないでしょうか。しかし、私が思うに、ル・コルビュジエはそんなに享楽的とは思わないけれど、お弟子さんの前川國男さんの建築からは、私はものすごく享楽的なものを感じてしまうのだけれど、何なのだろう。ですから、日本人だからと言ってやつし的表現が出て来るとも限らない。最終的には、国民性とかは関係なく、建築するその人がどういう人なのかによるのではないかな、とは思いました。

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