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空間について考えます

松隈洋さんの「残すべき建築」

「残すべき建築 モダニズム建築は何を求めたのか」
松隈洋 著   誠文堂新光社 刊

老朽化により次々と取り壊されて行くモダニズム建築や解体を免れたモダニズム建築について述べられています。
以下は目次ではなく、取り上げられている各モダニズム建築について、それぞれがどのような運命を辿っているかを示すサブタイトルが次の通りとなっています。

存続が危ぶまれる建築
失われた建築
失われゆく建築
移築・改修された建築
改修・増築された建築
改修・増改築された建築
現存する建築
保存再生へ方向転換する建築
生き続ける記念碑
再生活用された建築
保存再生が待たれる建築
重要文化財として現存する建築

読んでいて悲しい気持ちになってきますが、大変勉強になる本だと思いました。

14頁~15頁にかけて、1961年の「建築文化」に掲載されていたという鬼頭梓さんの文章が引用されています。長いので改めてここには書き写しませんが、空間についての話が書いてあります。シンプルで基本的なことしか言っていないのですが、とても良いメッセージです。

77頁 改修・増改築された建築 国際建築という方法の現在形 日土小学校
これは好ましい実例ではないかと思いました。
愛媛県の日土小学校、設計は松村正恒さんとのこと。改修された建築、大変美しいです。

全体的には、やはり前川國男さんの建築は素晴らしいと思いました。フランス仕込みのセンスを感じます。
他には村野藤吾さんでしょうか。こちらは生物的ですね。

ただ不思議に思ったことは、それ(取り壊しか存続か)を決めている人たちが一体誰なのかという所ではないでしょうか。
こうした本としてモダニズム建築が取り壊されてる現状について訴えることも必要だとは思いますが、最も良いのは、建築に従事する方々が、官僚や政治家、都市計画の方々と強いパイプを作ればこのような事態にはならないのではないかということは読んでいて思いました。すべて取り壊してしまって一から作った方が建設業界の経済が回るなど経済性の追求のためにこのようなことになっているのではないかと思いますし、その他には、壊してしまわないと後進が新たに建築するチャンスを得られないなどの問題もあるのかもしれません。しかし、その辺りを、モダニズム建築の価値を訴え保存する方向で動くには、公的な立場の人たちの力が要るのではないのかと素人考えでは思いました。更には民意も必要になってくるのではないかと思いますので、一般の人たち側の知識としても、建築物についての知識が多少はあった方がいいのではないかと思いました。せめて義務教育の美術の教科書くらいにでも近現代の建築史の概論くらいは載せて教えるくらいでないといけないのではないでしょうか。一般の人々の間に建築そのものに対する関心がそもそも無ければ、保存・改修などの必要性に気が付くことすらできないのではないかと思いました。

『建築から都市を、都市から建築を考える』槇文彦 著 聞き手 松隈洋 岩波書店 - Qu'en pensez-vous?

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前川國男 東京都美術館 これも「下降する」建築 - Qu'en pensez-vous?

東京文化会館(改修後)前川國男 - Qu'en pensez-vous?