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Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

中山繁信さんの「世界のスローハウス探検隊」を読みました

建築関連書籍

世界のスローハウス探検隊
日本・世界の「建築家なしの住宅」を巡る
中山繁信 著 
株式会社エクスナレッジ

こちら「建築知識」の連載を1冊にまとめた本だそうです。建築を素描してあり、住宅内部の様子を想像しながら興味深く見ることができます。
建築家なしの住宅ということで、原広司さんの「集落調査」風の趣がありますが、こちらは集落全体を見ているわけではなく、一軒分の住宅の造りや間取りがスケッチによって詳細に描き出された本となっています。外国の現存している古い住宅と、日本の古民家とが、交互に紹介されています。

見ていて思ったのは、日本の古民家は、家と言っても半屋外のようなもので、土間やかまどや囲炉裏があったり、家畜を飼っていたり、その他農業に必要な物や、養蚕など、家の中においてまで何らかの生産を行う体制が整っているという特徴があることです。
少々不思議な感覚に陥りました。
これらの家の住人は、現代の言葉を使うなら第一次産業に属している方々で、絶えず何か農作物を作り出さなければならない昔話に出て来るような人たちであったことが想像されました。

さらに、ここに挙げられている住宅すべて、現代のような高度な貨幣経済に至る前の時代の住宅のはずで、まだ税金として年貢が納められていた時代の住宅をどんなに見ても、貨幣経済の只中にある現代の住宅に対してどのようなメリットがあり、何らかの教示をもたらすことができるのだろうかと、見ている間にだんだんと疑問が生じてきました。

もはや我々はそのような時代に生きていないということが、ハッキリと見えた気がしました。
このことは、原広司さんの集落関係の本を見ていた時にはまったく気が付かなかったことです。どうして気が付かなかったのでしょうか。原広司さんは、空間の配列に関心が向いている傾向があり、読者の側としてもそのことに注意が引っ張られていたからではないかと思います。そして「記号場」ということを原広司さんが語られていることからもわかるように、空間に付随するあらゆる物質的側面から現象を分離し、リアルを抽象化しているからだと思います。
ところが、こちらの本のように、スケッチによって住宅内部の様子があからさまにわかると、たちまち現実のものとして、住宅内部で営まれていたであろう人々の生活が3Dとして立ち上がり迫ってきます。
それはまるで「夢が壊れた」くらいのショックがあります。

純粋に空間配列を考えたり学ぶために、名もなき人たちの手による住宅を調べるということが、一体何をもたらすのか。
経済システムが異なる時代の空間を調べることが何に役立つのか、それは、そこに何らかの普遍性が見出せるのかどうか、という点が第一に追求されるべき大きな問題なのだろうと思います。
経済、政治、宗教、などあらゆる支配的前提をすべて乗り越えた所にある空間的普遍性と抽象性を見出すことにこそ、建築空間を調べる意義があるのだろうと思います。

この本の中でさらに驚いた項目はこちら。
11とんがり屋根の街 イタリア アルベルべッロ「トゥルッリ」
こちらは有名で、世界遺産でもありますからテレビなどでも良く見かけますし、現在居住中の内部空間にまで立ち入って撮影した映像が放送されていることもたまにあります。夏涼しい造りで、非常に現代的な内部空間に見えました。
そして、こちらの本で住宅内部のスケッチを見てみると、スケッチ下に「わが国の3LDKの間取りによく似ている」と書いてあります。
確かにその通りで、マンション一世帯分のようです。積み石屋根のおとぎの国の白い壁のお家の中身が、日本のマンションみたいな間取りとは。悲しむべきことなのか喜ぶべきことなのかもわかりません。

一番最後の「地上に住む」「空中に住む」を読んでいて思ったこと。
高層マンションに住んでいる場合、大変な「勘違い」をしてしまう、ということがあるのではないかと思います。高い所から下界を見渡すとまるで天下を取ったかのような気分になり、地上の一軒家に住んでいる人たちに対する優越感すら感じることがあるのではないかと思います。
高層マンションに住むことはデメリットも多く、いわゆる「高層階病」は迷信だと言われていますが、私はそうでもないのではないかと思っています。地上近くに住む方が、健康にとっては良いのではないでしょうか。この本にも書かれているように、地に足がついた生活をした方が良きことがありそうに思います。
高い所で生活するとそうでない場合よりも寿命が短くなると相対性理論の本に書いてあったとも思いますので、高層階というのは日照や眺望など非常に快適な条件もありますが、人体にとってはあまり好ましくないのではないかと疑っています。

「集落への旅」 について - Qu'en pensez-vous?

『ディスクリート・シティ』 原広司 - Qu'en pensez-vous?

「空間<機能から様相へ>」 - Qu'en pensez-vous?

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