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空間について考えます

ウィトゲンシュタイン『論理哲学論』

今から10年前くらいに、中公クラシックスの版で読んだウィトゲンシュタインの『論理哲学論』。
これがやはりすごく良いんじゃないかと思うので、記事にしたいと思います。

今回久々に本をめくったら、何やらルーズリーフを折り畳んだものが挟まっていて、理解不能の記号のようなものが書き連ねてあって、一体何だろうと思ったら、自分で書いたものだとわかった。でもぜんぜん理解できない。う~ん、昔は頭が良かったんだなあと思いながら困っていたら、133頁に栞が挟まっていて、やっとそのルーズリーフにいろいろ書いた目的がわかった。
5.101の章に書いてある「与えられた数の要素命題の真理関数は、次のような種類の図表で示されよう。」以下の、一つ一つを理解しようとしてFとWや、pとqの関係とか、メモしながら考えて理解した形跡だということがわかった。

さらに今回思ったのは、この中公クラシックスの、本論『論理哲学論』に入る前に、解説みたいなのがあって、東北大学教授の野家啓一先生が「二十世紀の天才哲学者」というのを書いているんですが、これが非常に良かった。わかりやすいし、要点がしっかり書いてある。さらにウィトゲンシュタインの「哲学探究」というのを読んでみたいと思わせるくらいの紹介文となっています。この後に続いて出てくるバートランド・ラッセルによる序文よりも、推薦文としては良いくらいかもしれない。

それで一体どうしていきなりウィトゲンシュタインの『論理哲学論』かと言うと、「境界」ということについて論じている側面もあるということで、空間に関係してくる問題でもあるということで興味を持ったということが一つ。
そして、『論理哲学論』というのは、ひょっとすると現代の記号論などの走りなのかもしれないとも今となっては思ったりもするけれども、それよりかは、やはりきちんと哲学としての体を成しているというか、格調の高さを感じられる点が良いのではないかと思います。
そして、ウィトゲンシュタインは建築を作っている。ということで、一応建築家としての側面もあります。

でも、『論理哲学論』をざ~っと読んで、何かすごいことが書いてある、ということが直感的に理解できるというだけで、どこが凄いのか、何が凄いのか、をここで具体的に書く、ということがかなり困難です。一見奇抜に見えるけれども、論理学の先験性について語っていたり、実は、非常に常識的な哲学史観がベースとしてあった上で考察されているものだと思う。そこが歴史を踏み外していない感じがして良いと思う。

なかなか天才というのはそう頻繁に出て来るものじゃないので、ウィトゲンシュタインが亡くなったのが1951年ということでわりと最近の人だから、そうそうパラダイムシフトは起こらない。しばらくは、これを越えるものは出てこないのかもしれない。