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「再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築」 林美佐 著

旧ブログの記事ストックを見直していたら、こちらの本のレビューがあったので、コルビュジエ建築のまとめとして、新ブログの方にも再掲載します。

『再発見/ル・コルビュジエの絵画と建築』林美佐 彰国社

芸術学方面の勉強をきちんとされた学芸員の方で、内容的にはコルビュジエの画家としての側面からのアプローチが充実しています。適切な引用が随所に配置され、ル・コルビュジエ概論としてわかりやすい1冊となっています。また巻末の参考文献リストも充実しており、ここからまたさらに他の書籍を読んで勉強していける一覧として参考になります。
 
以下目次。

ル・コルビュジエとその時代
Ⅱ画家、ル・コルビュジエ
 ・自然探求のころ 
 ・ピュリスムの時代 
 ・詩的感情を喚起する静物 
 ・女性群像の時代 
 ・象徴的モチーフの結実 
 ・さまざまな表現手段の試み
Ⅲ建築家と画家の間で
 ・ル・コルビュジエのかたち―まなざしと手触り
 ・カラーリスト、ル・コルビュジエ―色を奏でる「色彩の鍵盤」
 ・モデュロールという挑戦―「普遍的」な美の物差し
 ・地中海1太陽の詩学―闇を獲得した光
 ・地中海2水の記憶―水鏡に映る無限の建築
 ・ル・コルビュジエの図画像―貝殻・牡牛・ユビュ王・パニュルジュ・カラス
 ・女性というモチーフ―絵画、建築の中の女性たち
Ⅳ「ル・コルビュジエ」とは誰だったのか

 

Ⅰ本名シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ(1887~1965)、生い立ちからの環境が語られます。

Ⅱ画家としての側面について書かれています。

自然素描を美術の基礎的素養として積んだ彼の絵画の完成度については予想以上の素晴らしさだと思います。コルビュジエピュリスム(純粋主義)に属するということです。「複雑になりすぎたキュビズムを理性的で秩序付けられた構成」へと導くオザンファンとともに歩んだ流派です。順に時代を追って絵画の図版を見て行って、最後、チャンディガール議事堂の扉に描かれた琺瑯板の絵は見事と思いました。

Ⅲ建築の5大原則だけにとどまらず、コルビュジエの建築と色彩についての関わりについて深い理解ができます。色彩と奥行きの関係、色彩こそが形態に躍動を与えるという考えがわかりますし、モデュロールに関連して音楽と数学との関係も述べられます。
この本の中には書かれていないことですが、古代ギリシャでは、ピュタゴラス教団が宇宙のハルモニアを聞いた、天界の調和する音階を聞いたと伝えられますが、コルビュジエの建築もまさにそのような調和的音階がアプリオリにデザインされているということです。

Ⅳは立派な論文となっていて、この章だけでも十分コルビュジエについて理解できる短くコンパクトにまとまった一章となっています。

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