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Qu'en pensez-vous?

空間について考えます

「住居に都市を埋蔵する」 原広司 著

建築家、原広司さんの、軽い文体で書かれた読みやすい本です。
本そのものの出版は1990年代ですが、各章の初出は、1970年代に雑誌などに載ったものらしいので、内容的には初期の頃のものとなっています。
これを読むと、原広司さんもすごく進化して現在に至っているのだなと思うし、1970年代からもうすでに大建築家へのフラグがハッキリと立っているのがわかります。
大建築家になる人でなければこんなすごいことは書かない。若かりし頃から著名建築家への「可能態」としてあったことがわかる本になっていると思います。

最新のWALLPAPERSを熱心に読む一方で、こんな昔もあったんだという、大建築家のこれまでに至るトラバースを感慨深く眺める瞬間もあってもいいのではないかと思います。
多層構造や反射性住居についての記述もあります。
有孔体という章もあって、これが一番古いようです。
原広司さんと言えば、空間を数学的に記述する試みが目玉かと思うのですが、この本の中には少ししかありません。

目次

「呼びかける力」

Ⅰ 多層構造
森の輸送
多層構造論のためのノート

Ⅱ 反射性住居
住居に都市を埋蔵する
線対象プランニングについて
形式へのチチェローネ

Ⅲ 未触の空間
埋蔵
場面
離立
下向
反転

Ⅳ 有孔体
有孔体の理論とデザイン
浮遊の思想

『空間<機能から様相へ>』に比べれば、簡単にさらっと書かれた文体なのだけれど、建築の話となると語り出すと止まらない感じで文章が進んで行きます。
建築雑誌などで、原さんのお話はだいたい皆さんよく目にして読んだことがおありだと思うので、だいたい言っていることは決まっていて有名だと思うのですが、コルビュジエの時代は機械だった建築が、現代においてはエレクトロニクス装置であって、意識の覗き込みであるといったお話も出てきます。
近代建築ー身体ー機械
現代建築ー意識ーエレクトロニクス装置
この対応関係、良く出てきます。
最近ではGAJAPAN128で、「意識の覗き込み」のお話がちらっとスマホの件で出てきていました。

私がこの本の中で心に響いたのは、82~84ページに書いてあること。建築雑誌などではこのような話はあまり読んだことが無いので驚きますし、なるほどとも思いました。
住みやすさについて論じているところで(以下引用)、

『全く驚嘆すべきことだが、衰弱した自然、制度としての都市、といった事実があるにも関わらず、多くの人々は、住みやすさは都市や自然に従属する住居にあると思い込んでいる。~中略~住居における住みやすさとは都市を住居に従属させる以外にないではないか。』

!!!すごいです!革命的というか、力強いというか、世の中に一石を投じているというか、思いもよらない刺激的発想ではないかと思います。
ここから、埋蔵とか反転、という話に関連していきそうです。

177ページから引用。
『均質空間は、その象徴として超高層建築をしたがえ、都市の表になっている。これを裏に反転させる想像力が、今日ただひとつ問われている空間的想像力である。」

さらに179ページから引用。
『反転してみると裏側には、Aでないものの全部が書きつらねてある。』

たぶんこの辺りの話は、『非ず非ず』やテトラレンマ、方丈の空間の逆転現象みたいなところにも話が及んで行くところだと思います。

最後に、この本に挟まっていた「住まい学体系栞」に、原広司先生の先生である内田祥哉先生によるこの本の推薦文らしきものがありました。興味深いお話が書いてあります。これが特筆すべきことかと思います。

「集落への旅」 について - Qu'en pensez-vous?

「空間<機能から様相へ>」 - Qu'en pensez-vous?

原広司 HIROSHI HARA: WALLPAPERS - Qu'en pensez-vous?

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